エルメスの刻印は、打たれたアルファベット1文字と、それを囲む枠の形を見れば製造年を読み解くことができます。
1964年から現在まで、文字の並び方や囲みのルールは4つの時代に分かれており、2026年の最新刻印は「G」にあたります。
本記事では、年代別のアルファベット早見表をはじめ、バーキンやケリー、ピコタンなどモデルごとの打刻場所、クロコダイルを示す素材記号や馬蹄マークといった特殊な刻印の意味まで、初めての方にもわかりやすく解説します。
お手元のエルメスを片手に、隠れた刻印が語る製品の物語をぜひ読み解いてみてください。
エルメスの製造年がわかる年代別「アルファベット刻印」早見表

エルメスの製造年は、刻印に含まれるアルファベット1文字を見れば読み解くことができます。
エルメスは1年ごとに製造年を表すアルファベットを切り替え、年代によって文字を囲む枠の形も変えているためです。
大きく分けると、次の4つの時代に整理できます。
- 1964年〜1970年:囲みなし。T→U→V→W→X→Y→Zの順に、1年ごとに進みます。
- 1971年〜1996年:〇(丸)で囲む。A→Zまで順番に進みます。
- 1997年〜2014年:□(四角)で囲む。A→Rで終了します。
- 2015年〜最新:囲みなし。不規則(ランダム)な文字が割り当てられます。
2015年以降のランダムな文字は覚えにくいため、以下も参考にしてください。
- 2015年:T
- 2016年:X
- 2017年:A
- 2018年:C
- 2019年:D
- 2020年:Y
- 2021年:Z
- 2022年:U
- 2023年:B
- 2024年:W
- 2025年:K
- 2026年:G
このように、囲みの形とアルファベットを照らし合わせることで、ヴィンテージ品から最新モデルまで製造年をたどれます。
年代を調べる際の注意点とイレギュラーなケース
刻印だけで年代を断定せず、製品の状態や販売時期も合わせて確認することが大切です。
同じアルファベットが異なる年代で繰り返し使われており、見間違えやすい傾向があるためです。
たとえば「T」は1964年と1990年、そして2015年でも使われています。
見分ける際に押さえておきたいポイントは、次の3つです。
- 1964〜1970年と2015年以降は、どちらも囲みなしのため、革の色あせや使用感で新旧を判断します。
- 2014年は途中で仕様が変わり、「□R」と枠なしの「R」の2種類が存在します。
- 2011年には、まれに「□」の中に「JO」と併記された刻印がエヴリンなどで確認されています。
なお、2015年からは「S」が使われなくなりました。
これは後述するソルド品(セール品)の「S」マークとの混同を避けるためだと言われています。
こうしたイレギュラーもあるため、迷ったときは無理に自己判断せず、経年の風合いなども含めて総合的に見極めましょう。
エルメスの「刻印」が持つ本来の意味とルール
エルメスの刻印は、単なる飾りではなく、その製品の「履歴書」のような役割を持っています。
一つひとつの製品を職人が手作業で仕立てているエルメスでは、刻印によって製造年・作り手・使用素材といった情報を管理しているためです。
- 製造年を表すアルファベット1文字(例:〇A、□R、Gなど)
- アトリエや職人を表す英数字の組み合わせ(例:CT323 AUなど)
- エキゾチックレザーの場合は、素材を示す記号
並び順は製品によって左右が逆になることもあるため、その都度確認してみてください。
刻印の意味を理解しておくと、大切なアイテムへの愛着が深まるだけでなく、中古で購入する際の判断材料にもなります。
アトリエ(工房)と職人を表す英数字の読み解き方
製造年のアルファベットに添えられた英数字は、一般の方が具体的な意味まで読み解くことはできません。
というのも、どの文字がアトリエ(工房)を示し、どの文字が職人を示すのかは、エルメス公式から一切公開されていないからです。
この英数字は、あくまでエルメス社内で製品を管理するための記号として機能しています。
将来バッグの修理が必要になった際、エルメス側が製造した工房や職人を特定し、責任を持って対応できるようにするための仕組みです。
そのため、この部分を無理に解読する必要はなく、「品質を保証するための管理番号」と捉えておけば十分でしょう。
エルメスの刻印はどこにある?(打刻場所)
エルメスの刻印を探すときは、モデルごとに決まった位置をあらかじめ知っておくことが大切です。
刻印はデザインを損なわないよう目立たない場所に打たれているため、やみくもに探すと革を傷めてしまう恐れがあります。
また、2015年を境に打刻場所が変更されたモデルも多く、製造年代によって確認すべき場所が異なります。
代表的なバッグや財布の位置を次の項目で具体的に紹介していきますので、お手元のアイテムと照らし合わせてみてください。
バーキン・ケリーの刻印位置
バーキンとケリーの刻印は、製造年代によって2つの位置に分かれます。
これは、2015年にエルメスが打刻場所のルールを変更したことが理由です。
- バーキン(2014年以前):正面クロアベルトの裏側
- バーキン(2015年以降):バッグ内側・左上部(マチ上部)
- ケリー(2014年以前):正面クロアベルトの裏側
- ケリー(2015年以降):バッグ内側・左側面の上部
2014年以前のモデルは、開口部を留める横長のベルト(クロア)を裏返すと見つけやすいです。
一方、2015年以降のモデルは、バッグの中を覗き込み、左上のマチ付近を確認してみましょう。
クロアの裏に何もない場合は内側を、内側になければベルト裏をと、両方チェックすれば確実に見つけられます。
ピコタンやエヴリンの刻印位置
日常使いで人気のピコタンやエヴリンも、それぞれ決まった場所に刻印があります。
デザイン構造が独特なため、他のバッグとは異なる位置に打たれている点を知っておくと安心です。
2つのモデルの刻印位置は、次のとおりです。
- ピコタン(ピコタンロック):バッグ内側で、ベルトを通す金具の近くにあります。比較的見つけやすい位置です。
- エヴリン:ショルダーストラップの付け根の内側や背面付近に打たれることが多く、外からは目立ちません。
エヴリンは、正面のH型パンチングとは反対側にあたる場所に隠れているため、使用中には見えにくくなっています。
どちらも革を強く引っ張らず、縫製ラインに沿って優しく確認するのがコツです。
普段は気付きにくい場所にあるので、明るい光を当ててゆっくり探してみてください。
財布・小物類の刻印位置
財布や小物の刻印は、収納ポケットの奥まった場所に隠れていることがほとんどです。
バッグと違って革が重なり合う構造のため、外からは見えにくい位置に打たれる傾向があります。
- ベアンスフレ:コインケース裏側にある札入れの奥
- ドゴン:カードポケット裏側の札入れの内側
- アザップロング シルクイン:小銭入れに付いたレザータブの裏側
いずれも、ポケットの内側にそっと隠れるように記されています。
無理に大きく広げると型崩れの原因になるため、光を当てながら隙間を覗き込むように探しましょう。
アザップロング シルクインはタブを裏返すとすぐ確認できるため、比較的見つけやすいアイテムです。
【素材・特別仕様】アルファベット以外の特殊な刻印一覧
エルメスの刻印には、製造年や作り手だけでなく、素材の希少性や特別な仕様を示すマークも含まれます。
これらの記号を知っておくと、そのアイテムが持つ本来の価値や背景をより深く理解できます。
エキゾチックレザーを示す記号や、関係者向けの星マーク、特別注文の馬蹄マークなど、種類はさまざまです。
ここからは、アルファベット以外の特殊な刻印を一つずつ具体的に見ていきます。
クロコダイルやオーストリッチ等を示す「エキゾチックレザー刻印」
見た目が似ている高級革は、ロゴ横の記号を見れば種類を正確に判別できます。
爬虫類系の革は素人目には区別が難しいため、素材ごとに専用の記号が打たれています。
- クロコダイル・ポロサス:^(カラット・山形)。最高級とされる小型ワニの革です。
- クロコダイル・ニロティカス:‥(ダブルドット)。ポロサスより大型でマットな質感があります。
- アリゲーター:□(スクエア)。斑目が大きく、くぼみが少ないのが特徴です。
- リザード:-(ダッシュ)。きめ細かく上品な光沢が魅力です。
一方、オーストリッチ(ダチョウ革)には、こうした爬虫類向けの専用記号は基本的に付きません。
オーストリッチは、クイルマークと呼ばれる羽軸の跡(水玉状の突起)で判別できるため、特別な記号は付きません。
記号を確認すれば、どの生物の革が使われているかを見極める手助けになります。
希少な「スターマーク(星印)」
ブランドロゴの近くに星(スター)のマークがある製品は、非常に珍しい特別なアイテムです。
これは、エルメスの職人や関係者、その家族などのために特別に作られた品であることを示しています。
一級の職人が手掛けた証とも言われ、品質は通常製品と同等かそれ以上とされています。
そのため二次流通市場に出回ることもほとんどなく、所有している人はごく少数です。
もしお手元のアイテムに星印を見つけたら、市場ではめったにお目にかかれないレアな一品だと言えるでしょう。
「スペシャルオーダー(パーソナルオーダー)」の馬蹄マーク
ロゴのすぐ隣に馬蹄(ホースシュー)のマークがある製品は、特別注文で作られた世界に一つだけのアイテムです。
これは、一部の顧客だけが利用できるパーソナルオーダー(スペシャルオーダー)の証として打たれるマークだからです。
たとえば、通常は見られないビビッドな配色のバーキンなどが該当します。
オーダーできる人自体が限られているため、馬蹄マーク入りの製品は数が少なく、希少性が高いです。
中古市場でも特別な配色や仕様として人気が高く、愛好家の間で注目される存在になっています。
正規セール品を示す「ソルド品(Sマーク)」
ロゴ付近に単独で「S」の刻印がある場合は、正規のセールで販売されたソルド品を意味します。
エルメスが顧客向けに開催する公式セール(ソルド)や、従業員割引で提供されたアイテムに打たれる印です。
製品の品質そのものに問題はなく、あくまで割引価格で購入された品であることを示すための記号です。
ただし買取査定に出す際は、通常ルートで購入された品よりも価格が少し下がる傾向がある点は覚えておきましょう。
エルメスの本物と偽物は刻印で見分けられる?
刻印の有無や内容だけで本物と偽物を確実に見分けることはできません。
近年は偽造品も精巧になっており、本物そっくりの刻印が施されているケースがあるからです。
逆に、正規品であっても刻印が見当たらない場合もあります。
- キャンバス素材の製品(エールラインやフールトゥなど)は、もともと刻印がありません。
- 手作業のため、職人による押し忘れや、力の弱さで薄くなっているケースがあります。
- 長年の使用で革が擦れ、経年劣化により刻印が消えてしまうこともあります。
つまり、刻印は真贋を判断する要素の一つにすぎず、字体や深さ、革の質感、縫製技術などを総合的に見る必要があります。
不安を感じたときは、自己判断で結論を出さず、信頼できる専門の鑑定士に確認してもらうのが最も確実な方法です。
まとめ
エルメスの刻印を読み解く際は、製造年を示すアルファベットと囲みの形を確認し、打刻場所や素材記号の意味を理解したうえで、本物と偽物は総合的に見極めることが大切です。
今回紹介した年代別の早見表やモデルごとの刻印位置、馬蹄マークやスターマークといった特殊な記号の意味を押さえて、お手元のバッグや財布をあらためて確認してみましょう。
