Webマガジン 第204号  

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<WebマガジンSignalNow> 2021年9月15日・第204号
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(1)2分で読める防災コラム 第150回
   最新の巨大地震予測研究について
(2)8月の地震活動
(3)8月の地殻変動

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(1)2分で読める防災コラム 第150回
   最新の巨大地震予測研究について
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9月12日に放送された「NHKスペシャル MEGAQUAKE 巨大地震 震災10年 科学はどこ
まで迫れたか」をご覧になったでしょうか。

甚大な被害をもたらす巨大地震の発生を、ほんの少しでも早く検知・予測できれば、人的
被害を大幅に減らすことが可能になります。

その最新研究の現状はたいへん興味深く、新たな知見に溢れるものでしたので、番組の
ソース元となった各所のWebサイト情報も含めて、最新の巨大地震予測研究について取り
まとめてみます。

1.巨大地震の「前ぶれ」検知について

現在日本で、マグニチュード(M)8以上の巨大地震が想定されているのは次の4か所です。

(1) 千島海溝:M8.8以上
(2) 日本海溝の外側(アウターライズ):M8.8以上 *東北沖
(3) 相模トラフ:M8.6以上
(4) 南海トラフ:M9以上 *太平洋岸(中部・近畿・四国・九州)

海洋研究開発機構の堀高峰 センター長(地質学)は、スーパーコンピュータ(スパコン)
を使って「巨大地震の前ぶれ」を「検知できないか」という研究に取り込んでいます。

スパコン「京」に精密な地理データ・精緻なパラメータを設定して再現し、プレート境界
に「ひずみ」を蓄積させ、実際と同じ「地震発生シミュレーション」を構築しています。

スパコン上で何度も、南海トラフ巨大地震を発生させると「巨大地震の起こり方」には、
いろいろなパターンがあることがわかりました。

例えば「スロースリップ」の早期検知です。

東日本大震災では、3月9日に同じプレート境界で「スロースリップ」が生じていました。

そこで、南海トラフについてもシミュレーションしていくと、その中に「地震の前ぶれ」
として、「スロースリップ」が生じるパターンがありました。

これを繰り返していくうちに、どういう「スロースリップ」が生じた時に、その「どのく
らいあとに、巨大地震が発生するのか」ということがわかってきたのです。

堀 センター長は、

「大きな地震の前には、必ず準備段階があります。

プレートの境界にどのくらい「ひずみ」がたまっていき、プレートにどのくらいの影響を
与えているかを知ることで、次に起きる地震の規模や津波の起こり方を想定できます。

次に起きる巨大地震の前に、その前ぶれを見逃さないようにしたいです。」

と話します。

これを受けて、気象庁は「スロースリップ」を通常と異なる場所で観測した場合などで
「巨大地震注意」として発表する「南海トラフ地震 臨時情報」を新設しました。

2.直下型地震の予測について

巨大地震には、海溝などの「プレートのずれ」によって生じる地震のほかに、内陸部での
活断層による「直下型地震」があります。

日本では、全国に活断層があり、既知の「発見済み」のものと、未発見のものがあります。

国は、活断層の過去の活動を調査し、これまで「どのくらいの周期で、地震を起こしてき
たか」をもとに、次に起きる「地震発生確率」を算定してきました。

しかし、未知の活断層による大地震「2018年 北海道胆振東部地震」「2008年 岩手・宮城
内陸地震」などについては、想定すらできませんでした。

京都大学 防災研究所の西村卓也 准教授は、これまでの活断層ではなく、地殻変動をもと
に予測する手法を新たに確立しました。

全国各地に設置されている「電子基準点(GNSS連続観測点)」によって構成される「地殻変
動の基盤観測網(GEONET)」を活用すると「大地の動き」をミリ単位で計測できます。

*GNSS(Global Navigation Satellite System):全球測位衛星システム。人工衛星を利用
して、有る地点の位置を正確に測定できるシステム。

この「GNSS(GPS)観測」によって「測地観測」を行い、「大地の動き」を調べます。

詳しく調べてみると、大地の動きが「南海トラフ側は北へ」「中国地方は東へ」「九州は南
へ」と向きが異なることがわかりました。

そこで、西村 准教授は「プレートは、複数のブロックに分断されているから動き方が異な
る」という仮説を立て、内陸部の大地震は「分断されたブロックの境界で発生する」とい
う見解に到りました。

この仮説をもとに、実際に「鳥取県中部地震(M6.6)」を、発生の半年前に予測して、見事
に的中させたのです。

2016年「熊本地震」も、西村 准教授が考える「分断されたブロックの境界」付近で発生
し、「大地の動きの向き」が異なる箇所で起きました。

「大地の動きの向き」が異なる箇所ほど「ひずみ」がたまりやすく、その「ひずみ」が大
きくなっている場所ほど、大きな地震が起こりやすいと言えます。

これを「ひずみ集中帯」と言います。

この研究成果をもとに、西村 准教授は「今後30年以内の大地震(M6.8以上)発生確率」
を今回、初めて発表しました。

西日本一体を約20km四方に分割し、M6.8以上の地震発生確率を色分けし、現在わかってい
る活断層を重ね合わせた地図です。

例えば、北陸から近畿にかけて「帯状」に、発生確率の高いエリアが連続しています。

また、九州地方では「大分から熊本」にかけてと「鹿児島と宮崎の県境辺り」に、発生確
率の高いエリアがあります。

次のURLから「内陸地震の発生確率地図」の画像が見られます。

<参考>NHKスペシャル「MEGAQUAKE 巨大地震 2021」Webページ
https://www.nhk.jp/p/special/ts/2NY2QQLPM3/blog/bl/pneAjJR3gn/bp/pEk4QL80Zp/

西村 准教授は「既存の国の活断層調査データと今回のGPS観測データを組み合わせること
で、より信頼性の高い予測ができると考えています」と話しています。

3.人工知能(AI)の活用について

アメリカのロスアラモス研究所のバートランド・ルレデュク研究員のチームは、「AIを活用
すれば、人間には検知できない地震発生前のわずかな兆候も見つけ出せる」という研究を
進めています。

地震発生が懸念されるエリアで観測される「ノイズのような微弱な振動」に注目し、「ひず
み」蓄積の度合いを算定しようというものです。

研究室で、2つの岩石を密着させ、1つの岩石に力を付加し、岩石がずれることで生じる
「模擬地震」を繰り返し、その際に発生する「微弱な振動」をAIに学習させます。

大量のサンプルデータを繰り返していくと、AIは地震前に発生する「ノイズ」に「特徴的
な変化がある」ことを発見します。

この「変化」を捉えることで、実際に「地震が発生する」時期を予測します。

実験を繰り返していくうちに、AIの「発生時刻の予想」は百発百中となりました。

これを「模擬地震」から「実際の地震活動」に応用できるかという検証が始まっています。

いずれも、これまでにない画期的な研究であり、実績も上げ始めて、期待感が高まります。

このような最新研究によって、巨大地震による甚大な被害が、少しでも軽減・減災される
と良いですね。

次号もお楽しみに!

by Hirono

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(2)8月の地震活動について
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全国で震度3以上を観測した地震の回数は14回で、このうち、最大震度4以上を観測した
地震は4回でした。

日本及びその周辺におけるM4.0以上の地震の回数は109回でした。

気象庁 21.9.8
http://www.jma.go.jp/jma/press/2109/08a/2108jishin.html

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(3)8月の地殻変動
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2019年春頃から四国中部でそれまでの傾向とは異なる地殻変動を観測しています。この変
動は、四国中部周辺のプレート境界深部における長期的ゆっくりすべりに起因するものと
推定しています。

石川県能登地方では、2020年12月頃から「能都」で南南西方向の変動が、「珠洲」で隆起
が見られるなど、この地域の地震活動とほぼ同期して地殻変動が観測されています。

硫黄島では、「硫黄島1」及び「M硫黄島A」で隆起が、「硫黄島2」で南向きの変動が継
続しています。

薩摩硫黄島では、「鹿児島三島」で2021年6月頃からわずかな西向の変動が見られます。

国土地理院 21.9.8
https://www.gsi.go.jp/WNEW/PRESS-RELEASE/2021-goudou0908.html

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第1位 8月16日 滋賀県北部で震度4の地震
https://www.facebook.com/SignalNow/posts/4542195022479812/
第2位 西日本の大地震発生確率を算出
https://www.facebook.com/SignalNow/posts/4622041091161871/
第3位 千葉九十九里浜に1,000年前の巨大津波の痕跡
https://www.facebook.com/SignalNow/posts/4597855813580399/

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